大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和24年(オ)281号 判決 1951年2月20日

東京都大田区市ノ倉一六番地

上告人

宮崎大藏

右訴訟代理人弁護士

神道寛次

同都品川区大井滝王子町四五三九番地

被上告人

駒場六郎

右当事者間の家屋明渡請求事件について、東京高等裁判所が昭和二四年一〇月一〇日言渡した判決に対し上告人から全部破棄を求める旨上告の申立があつた、よつて当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人神道寛次上告理由は末尾に添附した別紙記載のとおりである。

記録に徴するに、原審において証人嘱託訊問の決定に基き証人芳本玉吉の訊問を所轄裁判所に嘱託したこと及び右嘱託訊問の爲されるに先ち、右嘱託訊問をしない旨の決定をしたことは所論のとおりである、しかし当事者の申出た証拠を取調ぶべきか否かは事実審たる原審の自由に決し得べきところであるから、原審において所論嘱託訊問の爲されるに先ち右嘱託訊問をしないことを決定したとしても何等法則に反するものではなく、論旨は理由がない。

よつて民訴四〇一條同九五條同八九條により主文のとおり判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介)

昭和二四年(オ)第二八一号

上告人 宮崎大藏

被上告人 駒場六郎

上告代理人神道寛次の上告趣意

第一点

記録を閲するに昭和二十四年七月一日の原審口頭弁論書に依れば

嘱託訊問調書未着

右の口頭弁論において明確にする事項は左の通りである。

被判官は

合議の上証人芳本玉吉の嘱託訊問はこれを爲さない。

弁論を続行する旨を告げ次回期日を来る七月二十九日午前十時と定める旨告知した。

と記載されて居る。

然しながら証人芳本玉吉に就ては、之れより先きに弘前簡易裁判所に嘱託して訊問することに原審に於て証拠決定があり、右証拠決定に基いて同年五月二十七日弘前簡易裁判所に嘱託手続が爲されたものであり、七月一日当時には未だ右嘱託訊問調書が原審へ未着の状態にあつたに過ぎない。

其の後同年七月六日附を以て弘前簡易裁判所より原審に対し、被控訴代理人千葉隆の住所(被控訴代理人への証拠調期日通知不送達のため及証人芳本玉吉の轉居先へ嘱託書記載の弘前市笹森町十六番地より轉居のため呼出状不送達のため)照会が発せられたのである。

然るに原審は弘前簡易裁判所よりの右照会に対し本件訴訟当事者に何等の通告をも爲さず証人の住所再調査、申出の機会を與えずして之れより先既に同月一日の弁論期日に於て前記の通り嘱託訊問を爲さないことを職権を以て決定したのは証拠調に関する民事訴訟法の規定に違反したものであつて、判決の結果に重大なる影響を及ぼす。

法令違反の違法あり、破毀を免れざるものである。

以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例